海外では、有給休暇とは別に病気のための休日があることを知っていますか?
病気休暇を「Sick leave」といいます。
普通の休暇は「Vacation」といって区別されます。
アメリカは西欧諸国の中でも休みにくい国と言われ、全米レベルの有給の病休制度はありません。
それでも、多くの企業がSick leaveを制度化しています。
全般的な働き方も、日本と比べてゆったりとしています。残業をせず定時できっちり帰るのが有能さの証と捉える文化があり、夕方以降はボランティアや家族と過ごす時間を過ごしています。
日本の生活が嫌になった方は、外に出て違う生き方を選ぶ選択肢もあります。
この記事では、アメリカ在住歴4年の筆者が、アメリカでの働き方をリアルに感じてもらうために、病休を取る方法や、様々な休暇制度について解説しました。
Sick Leaveの権利
連邦レベル
全米レベルでは、給料を受け取りつつ病気休暇をとれる制度はありません。
12週間までであれば、病休をとったことによって解雇されないことだけは保障されます(FMLA:Family and Medical Leave Act)。
カリフォルニア州の場合
私の住んでいるカリフォルニア州では、30時間勤務する毎に1時間の有給Sick leaveを従業員に与えるよう義務づけられています。
およそ1週間働いたら1時間ちょっとの休みが取れる計算になります。
Sick leaveは、働いている本人の病気だけではなく、家族の病気でも構いません。子どもが急に熱を出したときや、パートナーの看病、介護に使えます。
ちなみにカリフォルニアは福利厚生が充実している州の一つで、移住先としてもかなりおすすめです。
- どの州でも、12週間までSick Leaveをとれる
- 病休中の給料保障は、州・企業によって様々
- カリフォルニア州では、勤務30時間ごとに約1時間、有給のSick Leaveがとれる
Sick Leaveの取り方
1.病休の規定を確認
アメリカでは、政府による一律の制度は最低限のルールにすぎません。企業・個人の独自ルールが極めて重要です。
休暇についてもそう。病気になったときに使える制度は、会社が独自に定めるものです。まずはHR(人事部)に連絡して、休暇をとれる日数や手続を確認します(できれば、オファーレターをもらった段階でやっておくと吉)。
HRの対応に不安があれば、休暇について定めた就業規則などを、文書で送ってもらいましょう。
2.もし否定されても、交渉して勝ち取る
もし病休を認める規定が無くても、交渉をためらわないでください。「同僚に感染させるリスクがある」とか、「出社しても生産性が低い」などと説明して納得させる余地はあります。
外に出て分かった日本人の特徴は、交渉慣れしていないこと、例外扱いを嫌うこと。どちらも、アメリカでsurviveするためには必要なスキルです。
相手に悪いような気がするし…
とか考える必要はありません。
欲しいものがあれば当然主張するはず。
不満があるなら、何でその時に言わなかったの?
という考え方の国です。アメリカで自己主張を抑えても、誰にとっても特はありません。
3.ボスへの連絡
日本では電話連絡が好まれますが、アメリカでは電話、メール、SMSでも何でも構いません。ボスが最も速く確認できるツールで伝えます。
ストレートに伝える
率直に「病気で休む」と伝えましょう。いろいろと説明すると回りくどく感じられ、exaggeratingだったりウソでは無いかと無用な疑念をもたらしてしまいます。
直接伝える
ボスには自分で直接連絡します。同僚に伝言を依頼するのはやめましょう。うっかりの伝達ミス(故意のこともあり)は、頻繁に起きると思っておいた方がよいです。
病気の詳細は伝えなくてよい
What is wrong? と聞かれるかもしれませんが、病気の詳細を教える義務はありません。
医師の手紙を求められたら提出しなければなりませんが、この場合も病気の詳細を書く必要はありません。メンタル系の事情を隠したい気持ちも尊重されます。
病欠の穴を同僚がカバーする必要上、「何日で戻れそうか?」の見込みだけは、可能であれば伝えるのが望ましいです。
ボスは、
病気じゃないのにウソをついて、Sick leaveをとっていないか?
を気にしています。
病休をとる際に診断書を求められるかどうかは会社次第ですが、虚偽を疑われたら確実に医者のStatementを求められるでしょう。出せなかった場合はクビになってもおかしくありませんから、Vacation代わりに病休を濫用するのはリスキーです。
Sick leave以外の休暇
有給休暇(Vacation)
休む理由は全く問われません。
未消化分は、次年度にいくらでも持ち越しできます。
数ヶ月の有給休暇をためて一気に取得するのも普通です。退職時に、未消化有給の分を未払い給料として受けとることもできます。しかも退職時の給与水準でもらえるので、あえて休暇を取らずに金銭で支払いを受けることを選ぶ人も多いです。
なお、Vacationの他にMental Health Dayとしてリラックスのための特別の休みを認める会社もあります。
産休・育休(Maternity Leave)
産休制度
制度的には、産休は「障害による休暇」と位置づけられています。
カリフォルニアは、全米でもっとも産休/育休制度が充実しています。
5人以上の会社に勤める場合は約4ヶ月間(Pregnancy Disability Leave Act: PDLA)、50人以上の会社に勤める場合はさらに最大12週間(California Family Rights Act: CFRA)の産休・育休が保障されています。
給与については、State Disability Insurance(SDI・障害保険)が適用され、産前4週間前から産後6週間まで、給与の55%が補填されます。
給与相当額を受給するには、雇用開発局(EDD: Employment of Develpoment)のサイトで自分で申請を行う必要があります。医師の証明書を取得してから49日以内に申請しないと受給できなくなりますので注意を。
育休制度
育休はFamily leaveといいます。
カリフォルニア州ではPaid Family Leave(PFL)制度が適用され、8週間は給料の55%を受給しつつ育休を取れます。
PFLの期間が尽きたら、連邦政府の制度(FMLA)を使います。
FMLAは12週間まで休むことが保障されますが、給料は保証されません。
PFLでも、給与補填額を受け取るには、自分でEDDのサイトから休暇申請を提出しなければなりません。会社は基本的に関与しないので、自己責任で行います。
申請を出した後は、会社が2営業日以内にEDDに手続書類を提出することになっています。HRがポンコツな会社であれば、ここで止まってしまうこともありますので、進捗確認メールを頻繁に出すなどしてHRと密な連絡をとっておくことをオススメします。
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